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平等と公平

平等 equalityと公平 equityの違いの図です。

公平の図では、結果が平等になるように箱を積み上げて高さを調節しているのですが、身長は実際には連続的に変化しているので、箱単位では公平さは保たれません。

例えば、左端の水色のひとがもう少しだけ身長が低ければどうなるでしょう?
平等と公平とグレーゾーン
このように、ちょっとだけ身長が低いひとが最も公平ではなくなってしまいます。公平にするために箱をひとつ積むか2つ積むか、あるいは積まないか、ってかなりザックリした判断しかできないのが現状なので、実際には公平は不可能だったりします。

自閉スペクトラム症は重症ほど診断がカンタン?

自閉症も「スペクトラム(連続体)」なので、身長と同様に、重症のひとから軽症のひとまで連続して変化しています。精神科の診断は重症で典型的なほど診断がカンタンなので、重症の自閉スペクトラム症の方は早めに診断され、手厚い支援を受けることができます。

その結果、軽症のひとは重症のひとよりも社会参加が低くなるという統計もあるようです。

高機能と社会参加

さらに、知能が高くて軽症な自閉スペクトラム症のひとはなかなか診断されず、支援が遅れて二次障害が生じてしまい、ますますややこしい病態になることがあったりします。

また、典型的で重症の自閉スペクトラム症のひとほど、充実した人員配置と豊富な資源のある専門機関でフォローされますが、軽症のひとは一般の精神科クリニックを受診していたりします。

つまり、自閉スペクトラム症の専門家ほど簡単なケースを診て、フツーの精神科医ほどややこしいケースを診ているというヘンな現状があったりします。

知能が高くて軽症の自閉スペクトラム症のひとはあまりかわいそうにみえない

知能が高くて、特に言語能力が高くて口が達者な自閉スペクトラム症のひとは、あまりかわいそうにみえないので、うまくいかないことがあって困っていても自業自得と判断されやすく、何かと支援が遅れてしまいます。

支援者は、知能が高いひとよりも低いひと、軽症よりも重症のひと、おっさんよりも女の子、を助けることにやりがいを感じる傾向があったりします。

「黒くて大きい犬問題(Big, Black Dog Syndrome)」あるいは「キモくて金のないおっさん問題」という考え方がありますが、「知能の高い軽症の自閉スペクトラム症問題」はこれに関連する問題だと思うわけです。


グレーゾーンのひとは本当は最も困っているのかも

自閉スペクトラム症を広く診断するか・狭く診断するかは、精神科医によってもまちまちだったりするので、自閉スペクトラム症と診断されるほどでもないけどコミュニケーション能力が低いひとは、コミュニケーション格差が拡大する昨今、誰にも助けてもらえなくて本当は最も困っているひとなのかもしれません。

このへんの事情を評論家の杉田俊介が「微妙なマイノリティとしてのアイデンティティのキメラ的混乱」とややこしく表現していまして、なにかと重要な概念じゃないかと思う今日このごろです。