発達障害の特性をレーダーチャートで一望する
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MSPA(Multi-dimensional Scale for PDD and ADHD)
発達障害の特性をレーダーチャートで一望できるアセスメントツール『MSPA(Multi-dimensional Scale for PDD and ADHD)』を開発した船曳康子先生の講演を聴きました。MSPAは実際に支援の現場で問題となる発達障害の症状14項目を9段階で評価し、レーダーチャートで表現するものです。
DSM5との関係
- DSM5から発達障害の下位分類が撤廃されたかわりに重症度分類が導入された。
- MSPAのスコアリング3-4-5はそれぞれDSMの重症度分類Level1-2-3に対応しているので便利。
下位分類との関係
- MSPAでデータを集めてまとめてみると、PDDNOSとADHD不注意型はほとんど同じような形のチャートになった。
- というわけで下位分類の意義は乏しいかもしれない。論争しても無意味かもしれない。
知能指数IQとの関係
- IQが高ければ、スコアリングの3点くらいまでは代償できるので見守りでOK。
- IQが低ければ、積極的に支援を導入するなど将来予後を予測できる。
- 得意分野を把握しておくことも重要。
発達障害アセスメントの煩雑さ
発達障害のアセスメントは各機関によって多種多様で、だいたいレポートが読みにくいのです。ダラダラダラダラ長文で記述されていて情報が雑多です。しかも評価者が主観的だったりするとそれはもう大変で、情報をひろうのにひと苦労するわけです。この煩わしさが発達障害の難しさの大部分を占めてる気すらしてます。
これまで自分なりにアセスメントの書式を工夫してみたりしたのですが、MSPAのように視覚的に一望できるレーダーチャートはとても便利だと思うわけです。
診断が先か、支援が先か
船曳先生はもともと内科医で、発達障害の専門外来の予約が2年待ちだったりする現状を憂いて急遽コレを開発したそうです。医療機関へ受診して診断されなくても、現場でできる支援があるハズなので先にやってしまおうということみたいです。
実際に支援の現場では、そのひとの特性に合せた支援が診断よりも先に行われていることは珍しくありません。とある就労支援施設では「このひとはうつ病の診断なんですがこちらでは発達障害として支援してます」ってこともしばしば。
統合失調症と発達障害、診断ー治療の差異について
統合失調症を診断する時、精神科医は確固たる疾患単位を想定し、症例をそれに寄せて診断します。そして統合失調症という診断名は即治療を意味します。現在は通院でも治療が可能になっていますが、昔だったら即入院なわけです。
一方、発達障害は医師が診断を下したところで事務手続き上の意義しかなかったりします。健常者からなめらかに連続するスペクトラムだし、ひとりの患者さんのなかでも複数の診断名がオーバーラップしたりするし、実際に支援が必要な特性は同じ診断名でも違っていたりするので、患者さんそれぞれの特性をアセスメントすることが必要になります。
以前紹介した十一先生的なスプリット診断は、疾患理解のためには重要で精神科の従来診断とも相性がよくて受け入れやすいのですが、それ単独では実用性という点ではやや不十分だったりすると思います。
統合失調症と固有名/発達障害と確定記述
ここで唐突に以前の記事で紹介した「固有名vs確定記述」に寄せて考えてみます。
『統合失調症は固有名の疾患であり、発達障害は確定記述の疾患である』と言えるかもしれません。
患者さん自身も、統合失調症のひとは固有名というか象徴的なものにこだわりがちで、発達障害のひとは確定記述というかデータベースやスペックにこだわりがちな傾向にあるという対応があっておもしろいなあと思っている次第です。
『統合失調症は固有名の疾患であり、発達障害は確定記述の疾患である』と言えるかもしれません。
患者さん自身も、統合失調症のひとは固有名というか象徴的なものにこだわりがちで、発達障害のひとは確定記述というかデータベースやスペックにこだわりがちな傾向にあるという対応があっておもしろいなあと思っている次第です。