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ひきこもることで闘争を避けるようになることは犯罪率の低下に関係しているかもしれません。それは結構なことかもしれませんが、ひきこもりが自殺の原因になっている可能性があったりするのは問題です。


自殺率と失業率の密接な関係

自殺者と失業者は同じように推移しています。つまり、無職のひとは自殺しやすいのです。

バブル崩壊後から自殺者数が増加の一途をたどり、一時期は年間3万人を超えて高止まりを続けて大騒ぎになりました。自殺対策の予算がたくさんおりて、僕も学校で自殺対策の授業を頼まれてやったりしてました。

ところが結局、2010年代から失業者が減ってくると自殺者も減ったわけです。失業者減少の原因は、金融政策の効果とか人口動態の変化とか諸説あります。ともかく、失業者を減らすことは自殺対策に効果的であることは明白です。

男女別で見てみると、
【男女別】実業率と自殺率の関係
女性は失業率と自殺率が相関していませんが、男性は驚くほど相関しています。つまり、「無職の男性は生きる価値がない」という世間からのプレッシャーがすさまじいことがわかります。

はたして、汗水たらして働いていない男性は生きる価値がないのでしょうか?

もちろん、そんなことはありません。


トマ・ピケティの「r>g」

フランスの経済学者トマ・ピケティの「21世紀の資本」は150万部を超えるベストセラーになりました。
21世紀の資本
トマ・ピケティ
みすず書房
2014-12-06





古今東西膨大なデータを解析することで「r>g」という法則を実証しました。

r/資本収益率 所有する株や不動産から得られる利益
g/経済成長率 労働による収益、働いて得られる給料

汗水たらして働くよりも、株や不動産を持つことで配当や家賃をゲットしているひとの方が儲かっていることは、これまでもみんなうすうす気づいていましたが、ピケティさんが身もふたもなく実証してしまったのです。

なので「汗水たらして働くことが正しい」という価値観は必ずしも正しいわけではないということになります。

つまり「汗水たらして働いても幸せになれるとは限らない」し、「働くこと」はさまざまなリスクを抱えることでもあるわけです(職場はうつ病の玄関口か?)。


アンチ資本主義としての「働いたら負け」

賃上げデモ
r>gゆえに、賃金を上げることで富の再配分を促進させることはとても大切なことです。賃金上げろデモは正論であることに間違いありません。

しかし、賃金上げろデモよりもたったひとつの冴えたやりかたがコレ。まさに過激なパンクです。
働いたら負け
みんなが一斉にコレをやると資本主義システムが維持できなくなるので、お行儀よくデモをやってくれた方がよっぽど助かります。


非社会的行動としてのFIREムーブメント

関連する現象として、アメリカのミレニアル世代/1980年代〜2000年初頭生まれの若者たちを中心に静かなブームを巻き起こしてるFIREムーブメント。

FIRE/Financial Independence , Retire Early(経済的に自立して早く引退しよう)。
FIREムーブメント
アリーとジョーはふたりとも教師。徹底した倹約と投資によって100万ドルの資産を築き、30代で仕事をリタイア。その後も年間支出2万ドルの倹約生活を続けながら気ままに暮らしています。

若いうちから贅沢せずに徹底的に倹約し、株や不動産など資産形成して不労所得を積み上げ、早期にリタイア。ナニゴトにもしばられずに自由気ままに生きていくスタイル。旅行したり、ブログやSNSで情報発信したり、趣味を楽しんだり。

社会との関係がタイトではなくルーズなわけです。このようなライフスタイルが支持されてきつつあるようです。

日本でも早期リタイアを達成したひとのブログがちょこちょこみられるようになっています。のぞいてみると、ひきこもり気質のひともけっこういるようです。

ひきこもりは、非行や犯罪などの「反社会的行動」と対照的に「非社会的行動」と呼ばれています。社会から背を向けて、社会と関係を結ぶことを拒否することです。

そうすると、早くから職場という社会から降りていくFIREムーブメントは、とてもうまくいっている非社会的行動といえなくもありません。


まとめ

「汗水たらして働かないヤツはダメだ」という価値観は自殺率を高めます。また、資本主義システムには矛盾があって「汗水たらして働いでも幸せなれるとは限らない」ので、職場という社会から降りていく生き方を選択することは合理的だったりします。

つまり、ひきこもりのメリットその2は「働かなくてもいい」ことです。

もちろん「働くこと」は富を手に入れるだけでなく、仲間と共に協力して大きな仕事を成し遂げることで達成感を得たり、自己実現を目指す手段でもあります。幸福度を高めるための重要な営みであることも確かです。

次回は、そのへんも含めつつ、ひきこもりのメリットその3「欲望を他人に利用されない」について考えていきます。