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オオカミの社会性、イヌの定型発達症候群

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エライ人に従順なひとのことを「◯◯の犬」 とバカにしたりしますが、いいオトナになっても「社交辞令のひとつも言えやしない」不器用なひともいたりして、なかなかどうして犬の社会的能力はあなどれないのです。というわけで、最近はイヌについて勉強しています。



ヒトとイヌの分岐

およそ8000万年前にヒトとイヌは別の道を歩み始めました。

その頃はちょうど恐竜が陸上世界を支配していて、ヒトとイヌ共通の祖先である哺乳類は毎日怯えながら生活していました。やがて、ヒトの祖先は森へ、イヌの祖先は暗闇へ、それぞれ身を隠して脅威的な捕食者から逃れ、出し抜き、生き延びるために独自の知能を発達させます。

ヒトの祖先は樹の上を自在に動いて木の実を食べるために色彩感覚や立体視(両眼視のできる顔)を発達させ、イヌの祖先は暗闇の中で動けるように聴覚(尖った耳)と嗅覚(尖った鼻)を発達させたため、それぞれまったく違う姿に進化していきました。


ヒトとイヌの邂逅

およそ3500万年前には、肉食哺乳類の中でイヌとネコが分岐しました。

両者は狩りの様式が異なっていて、ネコの祖先は単独で草木に隠れて一撃必殺で獲物をしとめ、イヌの祖先は草原にいる獲物を集団で追いつめてしとめていました。

霊長類をのぞけばイヌ科の動物は状況に応じて行動を変える能力に長けるようになりました。キツネやタヌキもイヌ科ですが、相手を騙して出し抜くという「ソーシャル・スキル」に長けていたからこそ「化かされる」逸話ができたのかもしれません。

イヌ科の中でも、イヌの祖先となるオオカミは、狩猟のために組織化された集団を形成し、意志を伝達して役割を分担することで、自分よりも大きな獲物を狩ることができます。

この集団狩猟こそが、種として大きく隔たったヒトとの共通点=収斂進化と言えます。

また、イヌはヒトと同様に持久走に長けています。後肢の指は骨が癒合して4本になって強靭になっていますし、パンティング(舌を出してハァハァ)は呼吸ではなく冷却のためのものだったりします。


ヒトとオオカミの競合

オオカミはイヌ科の中でも社会性が高い動物で、家族以外とも協力して狩猟や育児を行う柔軟な共同体を形成していることが認められています。

イヌの動物学 (アニマルサイエンス)
猪熊 寿
東京大学出版会
2001-09-01


オオカミは度重なる過激な気候変動に直面し、動的で可変的な社会システムを洗練させ、その優れた適応能力によって世界中に拡散し、ヒトが新世界へ移住を始めた頃(1万5000〜2万年前)までには最上位捕食動物の地位を確立していました。

イヌの動物行動学: 行動、進化、認知
アダム ミクロシ
東海大学出版部
2014-11-26


やがて、食糧資源をめぐってヒトとオオカミは競合するようになります。食糧が豊富な環境であれば両者は友好な関係を結び、時にオオカミは信仰の対象となりましたが、野生動物が減少し牧畜が始まる頃になるとオオカミは忌み嫌われる存在となりました。

ともかく、集団狩猟という共通の習性ゆえにヒトとオオカミは関わり続けることになり、そのような状況が土壌となって、イヌへの最終進化がもたらされました。


オオカミとイヌの境界線

犬が私たちをパートナーに選んだわけ 最新の犬研究からわかる、人間の「最良の友」の起源
ジョン・ホーマンズ
CCCメディアハウス
2014-01-30



何しろ犬というのは、いつの間にか仲間を裏切っていた連中の子孫なのだ。確かに最初に人間の懐に飛び込んで、媚びを売り始めた間抜けなオオカミがどこかにいたはずだ。
では、オオカミとイヌの違いは何でしょうか?

イヌには、共同注視(アイコンタクト)で相手の視線や指差しから意図を理解するなど優れたコミュニケーション・スキルがみとめられています。オオカミやチンパンジーはなかなかコレができないので、イヌの認知機能が優れていると一般的には考えられていたりします。

一方で、ただ単に「攻撃性が欠如している従順な気質をもったイヌ」が選ばれるようになったことで、ヒトとスムーズに協力的な関係をもつことができるようになり、既存の認知機能がいかんなく発揮されたという説もあります。
ゲノム的には気質の変化ほど効率的なプロセスはない。アンドロゲンの発現を制御する遺伝子を少しだけ移動させるか、セロトニントランスポーター遺伝子を動かすだけで雪だるま式効果が得られる。しかも極めて効率がいい。それは費用対効果の高い進化上のトリックで、莫大な見返りも期待できる 
優秀さよりも従順さが「社会性」として評価されることってよくあると思います。

ここで乱暴ですが、イヌを定型発達に、オオカミをASDに対比してみると、優秀でも従順さに欠けるひとはしばしばASDと診断されやすかったり、ASDでも従順なひとはなかなか診断されにくかったりする事情が理解しやすくなりそうです。


オオカミのオスはイクメン

あと意外なことに、オオカミのオスは子育てに対して非常に協力的だそうです。一方、イヌのオスは自分の仔犬にあまり関心を示しません。にもかかわらず、飼い主の子どもには大きな関心を示して世話をすることがあります。

なので、いったん家畜化されて(イクメン本能を失って)その後野生化した野犬の場合は悲惨なことに、メスがワンオペ育児をすることになり、仔犬の生存率が低くなってしまいます。

イヌが獲得した社会性とは、家族よりも共同体を優先する習性と言えます。

家庭を犠牲にして所属集団(イエ)に尽くすヒトは「社会性」が高いと言われますが、うっかり尽くすべき相手を間違えると、野犬のように悲惨な運命をたどることになったりします。

こうしてみると、オオカミは自分たちでちゃんと社会をつくっていたけど、イヌは自分たちで社会をつくることを放棄して人間社会に参入したとも言えます。


生物にとっての社会性とは?

ヒトにとっての社会性とは、ざっくり言うとアカの他人と協力することなので、社会性を身につけることは悪意あるひとにダマサれてカモられるリスクと常に隣合わせです。ソーシャルスキルトレーニングを受けると詐欺の被害に遭いやすくなることもあったりします。

自閉症コミュニティの「定型発達症候群」というジョーク、メンタルヘルス領域で言うところの「過剰適応」「メランコリー親和型」は、他人に合わせて協力し過ぎるがゆえに消耗してしまう傾向です。

なまじ定型発達が過剰であるがゆえに不幸になっているヒトは、オオカミ的な社会性を身につけた方がイイのではないかと思う今日このごろです。

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ソフトスキルとライフスキルトレーニング

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先にご案内した発達障害の就労支援の講演会
で、梅永雄二さんの講演を聴きました。
キーワードは『ソフトスキル』と『ライフスキルトレーニング』です。
発達障害のある人は、子どもの時から様々なトラブルにさらされます。
虐待・いじめ・孤立・不登校・ひきこもり・非行などなど

大人になってからも同様です。
ニート・フリーター・いじめ・うつ・休職・退職・ひきこもり・子どもへの虐待・犯罪・ホームレスなどなど
さすがに範囲が広すぎるだろ!ってツッコミたくなります。ですが、個々でみると例外もあるでしょうが、集団でみると発達障害のある人の方が上記の問題を抱えている確率は高くなると思います。
 
米国の障害児教育で重視されている項目
   * 身だしなみ
   * 健康管理
   * 住居
   * 余暇
   * 対人関係
   * 地域参加
   * 教育・就労
   * お金の管理
   * 法律
生活に密着したライフスキルは、日本ではおろそかにされがちかも。
 
発達障害のある人の退職理由
仕事そのもののパフォーマンス(ハードスキル)ではなく、
そのほとんどが『ソフトスキル』
『ソフトスキル』とは仕事以外の能力で、主にコミュニケーションや対人関係スキルのこと。日常生活や余暇活動をうまくやる能力も含む。休憩時間をいかに過ごすかってとても大事。
このへんは、パフォーマンスそれ自体が低下するうつ病などの精神疾患とはいくぶん事情が異なってきます。

ソーシャル・スキル・トレーニングSSTから『ライフ・スキル・トレーニングLST』
統合失調症のひとにSSTは有効だが、発達障害のひとがSSTを受けて安易に対人関係つくろうとすると訪問販売なんかにボラれて困ったりする。
まあ、統合失調症のひともかなりボラれてますので一概に言えませんが。。。ただ両者を比較するとどちらかといえば、統合失調症のひとはシステムを根底から疑うことがありますが、発達障害のひとはシステムに安易に乗っかりがちです。

発達障害のひとにSSTをすることは、目の不自由な人に視る訓練をするくらい無意味なのではないか。それよりも、障害を持ち合わせていても生活しやすくなるような工夫をしていくべきではないかという発想です。
先で上げた障害児教育の項目つまりライフスキルをつけましょうと。モヤっとした『社会性』をターゲットにするのはめんどくさいんで、サクサクとライフハックしましょうと。

例えば、自分ができるようになるのではなく、障害を補うツールを利用したり、困った時は他人を頼るスキルを身につけることが大切。
感覚過敏をなくそう!とかわけわかんなくて、『ノイズキャンセリングヘッドホン』『アーレンレンズサングラス』が便利なので使おうと。その他、ゾーニングとしての壁際、窓際、個室の利用。




あるいはトレーニングすべきは当事者ではなく周囲のひと。発達障害のある人専門の自動車教習所に関わった時は、威圧的なスタッフにはやめてもらった。
って、わりと過激なことをおっしゃってました。
 

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