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前回からの続きです。


今回は民間業者が運営するひきこもりのひとを自立させる施設について考えてみます。

とそのまえに、ひきこもり支援の概要についてみてみましょう。


ひきこもり支援の3ステップ

厚生労働省の「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」によると、ひきこもりの支援は大きくわけて3段階のステップとなっています。
  1. 家族の支援
  2. 本人の支援
  3. 集団への参加
ざっくり説明すると、、、

1.家族の支援
ひきこもりの支援は家族からの相談を受けることから始まります。本人はひきこもっていて出てこないからです。この「家族の支援」が1番肝心なところで、ひきこもりの問題は本人だけではなく家族を巻き込んでいくので、家族自身も消耗・疲弊していてケアが必要になっていることがよくあるわけです。なので、まずは家族が元気になってもらって、本人との関係を調整していくことから始めていきます。

2.本人の支援
支援者が家族を介して本人に間接的にアプローチすることができるようになれば、徐々に変化がみられるようになります。本人が来院なり通所するようになれば、もうかなり状況は改善しているといえるので、あとひと息です。支援者が本人へ直接アプローチすることができるようになれば、変化はより促進されます。

3.集団への参加
最終段階として、いよいよ集団へ参加します。ここまで到達できればほとんど目標達成といえます。適切な環境さえ提供できれば、同じ境遇の仲間と接して共に時間を過ごすだけで、かなりの改善効果が見込まれます。しょせん親や支援者の立場にいると本当の意味での交流はできないし、仲間にはなれないからです。


ひきこもり自立支援施設の強み

さて、問題になっている業者は、ひきこもりの自立支援のために共同生活をする施設/寮をもっていて、強引に入所させるところから支援が始まる場合があるようです。

つまり、1と2のプロセスをすっ飛ばして、いきなり3の最終段階からスタートすることができるわけです。

倫理的な観点を無視して、純粋に支援の効率だけを考えれば、これはかなり有利であると考えざるを得ません。1と2はかなり時間と労力のかかる地道なプロセスだからです。

昔から戸塚ヨットスクールはじめ、さまざまな若者の自立支援施設が(一時的であるにせよ)注目されて人気を博すことがあるのは、共同生活による改善効果が絶大だからでしょう。
  
ではなぜ、このような民間の自立支援施設がさまざまなトラブルを起こしたりして長続きしないのでしょうか?


自立支援施設でトラブルが多いワケ

原因のひとつとして考えられるのは、統合失調症などの深刻な精神疾患を抱えるひとを対象にしている可能性です。

民間の自立支援施設は、共同生活の場という強みをもっていますが、残念ながら精神科医療のシステムがないので、精神疾患のあるケースを適切にケアすることができません。民間業者と違って、医療はリソースがとても潤沢なので人員や設備が充実しています。

また、統合失調症などの精神病は、病気の時期によっては共同生活と相性が悪かったり、自立を促進するはたらきかけが病状の悪化をまねくことがあります。

そもそも、本来は精神科医療で対応すべき精神病をもつひとを民間業者が相手にしているのはおかしな話です。これは、以前の記事で指摘したように、ひきこもりと精神科医療のねじれが関係しているかもしれません。



そもそも、ひきこもりの定義からしてねじれているので、ひきこもりの権威である精神科医の斎藤環が精神病以外のひとを支援の対象とする一方で、資格のない民間業者が精神病のひとを支援の対象としているという「ねじれ」が生じています。


自立支援施設と精神科病院のむすびつき

なので、最近の民間業者は精神科病院と連携してこれを補完しようとしているようです。そうすることによって、自立支援施設で対応できないほど精神状態が悪化した場合は、専門機関へ治療やケアを任せることができるからです。

これはいちおう理にかなっていることのように思えます。

しかし、ニュースによると、ひきこもりの自立支援施設の入所を拒否したために精神科病院へ強制入院/医療保護入院になった方が処遇が不当であったとして、病院側に対して損害賠償請求訴訟を起こし、病院の医師を刑事告訴しています。


原告側は治療のためではなく「見せしめ」のために精神科病院へ入院させられたと主張しています。

まだ事実関係が明らかになっていないのでなんともいえませんが、はたして連携している精神科病院は悪徳業者の片棒をかつぐ悪徳病院なのでしょうか?

争点は、病院受診時に原告がどのような精神状態だったのか、医療保護入院の要件を満たしていたのかどうか、になるでしょう。

というわけで次回は、ひきこもりと医療保護入院についてまとめていきます。